一身独立

多動性を発揮し、「21世紀の百姓」を目指す27歳元エリートのブログ。

自然変動型再エネ普及に付随する火力発電の稼働率低下


再生可能エネルギーの普及政策には様々な手法がある。そのうちの一つに「FIT(固定化価格買い取り制度)」を機能させるために不可欠な「優先給電」がある。

「優先給電」とは、再生可能エネルギーによって発電された電力を、他の電源より優先して電力系統に供給しなければならないという原則である。
普通に考えれば想定出来るように、再生可能エネルギーによる電力の供給が増えれば、他の電源の発電所は、稼働率が下がる。

また再生可能エネルギー(その中でも特に風力と太陽光のような自然変動型再生可能エネルギー)の供給の増加、そして短期間での電力取引市場が整備されると、「メリットオーダー」という効果が表れるようになる。

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日経BPウェブサイトより

「メリットオーダー」効果とは、燃料費がかからず私的限界費用が無料という特徴を持つ自然変動型再生可能エネルギーの電力が、安価であるために市場で優先して取引されるようになる現象のことを指す。つまり需要を埋めるための供給計画を立てる際に、自然変動型再生可能エネルギーの方が安く電力を供給出来るため、優先的に購入されるのだ。この効果により、発送電分離による公正な系統運用と、短時間取引の電力市場が整備されていれば、優先給電の原則がなくとも、自然変動型再生可能エネルギーが経済性の高さによって普及していくのである。

先日発表された「自然エネルギー財団」の報告書も、日本で今後そのような動きが起こることを裏付けている。

「日本における石炭火力新増設のビジネスリスク」
http://www.renewable-ei.org/activities/reports_20170720.php

この報告書によれば、2026年に日本の石炭火力発電所稼働率は、2016年の76%から56%まで下がる恐れがあるという。なおかつ省エネルギー(エネルギー効率化)と、原子力発電所の再稼働が進んでいれば、この数字はさらに下がり、50%を切る恐れも十分にある。
現在国内に42基の新設計画を抱える石炭火力発電は、環境への悪影響のみならず、このような事業リスクも抱えているのである。

2012年のFIT施行後、太陽光発電が普及した九州電力管内では、既に火力発電所稼働率低下が起き始めていると推定される。例えば昨年の5月のある日の電源構成を見ると、太陽光発電が昼間の供給量に占める割合は5割程度に達している。

九州電力管内の2016年5月1日の電源別供給割合
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https://wellnesthome.jp/energy/

従来火力発電で賄っていたであろう電力供給を、昼間に限れば限界費用が無料の太陽光発電が代替している。

現在、国で議論されている「容量市場」は、このような火力発電所稼働率低下への対処法の一つである。しかし平滑化や揚水発電、蓄電池の設置など、自然変動型再生可能エネルギーの出力変動を緩和する施策は他にも多くあるにも関わらず、容量市場の制度を前に進めれば、その政策は大手電力会社救済策に堕す恐れがある。

「メリットオーダー」効果が生まれ、自然変動型再生可能エネルギー普及の好循環が生まれるには、発送電分離を機能させることが不可欠だ。現在の系統運用制度は、持ち主である大手電力会社が自社の発電設備から供給される電力を優先的に受け入れるインセンティヴを与えてしまっている。つまり電力系統が準公共財として、全ての電力会社に開かれていない。

「再エネはコストが高いから、普及しなくて当然」という主張は、電力を私的財の流通と混同する誤謬を侵している。経済学の教科書が教えるように、市場に任せていれば正の外部性を持つ自然変動型再生可能エネルギーは過小供給に、負の外部性を持つ火力・原子力が過剰供給される。電力の安定供給と、電力流通に伴う環境負荷の低減は、市場に任せていては達成出来ず、公共部門の適切な介入が必要だ。その介入が現状中途半端であるため、再生可能エネルギーの普及政策自体が中途半端になってしまっているのが今の日本の現状である。3E+Sを全て満たす可能性を秘めた省エネ+再エネの普及に向けて、全力で舵を切る政策が求められている。


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