一身独立

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【書評】『大卒だって無職になる』


本書の焦点は、大学在学中および大卒の学歴を持つ若者の事例である。

現状新卒枠では就職出来そうにないので、身につまされる思いで読み進めていった。

筆者は、若者が自立して働き続けられるよう支援するNPO「育て上げネット」の理事長である。彼のNPOで支援している若者は、中卒・高卒や、高校・大学中退者もいる。しかし本書は特に大学在学中もしくは大学を卒業したものの、様々な事情で働き続けられない若者を対象としている。筆者によれば、このような若者は、「育て上げネット」が支援した若者ののうち、7%程度を占めるという。

何人もの事例が紹介されていた中で、一番共感できたのが、「仕事が出来そうに見えて出来なかったW君」の事例である。

彼は有名中高一貫校、有名国立大学を経て、医療機器メーカーで1年間勤務、仕事を辞めてから、筆者が理事長を務めるNPOに相談に来たという。コミュニケーションも問題なく取れる上に問題のない経歴、加えて英語も操り、一見自立支援が必要ないように見える。

しかしNPOの集団プログラムに参加して彼の問題点が明らかになる。集団プログラムでは仕事を役割分担、各自が自分の責任の仕事を進め、終わらなければ他人の仕事をフォローするという仕事の予行演習を行う。

彼は指示を忘れ、二つ以上のことを同時進められず、優先順位をつけられないなど、組織で仕事をする者として致命的な欠陥を抱えていた。

現代では学校で求められる能力と、会社で求められる能力は根本的に異なっている。試験はクラスメイトとの競争はあるものの基本的に個人戦である。一方会社での仕事はチーム戦で、役割分担に従って自分の役割をこなす必要がある。

W君は後者の能力が低く、学校での評価と会社での評価がマッチしなかった。なまじ学校での評価が高かったために、会社で周囲から「怠けている」「仕事が出来ない」という評価を受けてしまった。求められる能力の違いに対応出来ず、W君は苦しみ仕事を辞めざるを得なかった。

正直に言えば、私にもこのような不安がある。いくら勉強が出来ても、それは仕事が出来る上で求められる多くの能力のうちの一つに過ぎない。経験のない仕事を割り当てられて、適応出来る自信が100%ある訳ではない。

このギャップを埋める適切な策は思い浮かばない。特に昔ほど日本企業は新人社員が育つのを待つ余裕がなくなり、即戦力を求めてくるという。「我慢が足りない」と若者を批判する上の世代は、上司や先輩から丁寧に仕事を教えてもらったかもしれない。そのようなサポートを、今の若者は受けづらくなっているのである。そのような背景は、頭に入れておく必要がある。

筆者は、ニートや仕事を続けられない若者が出てくる決定的な要因は解らないと考えている。安易な若者批判にも、家庭や学校や会社に責任を帰す議論にも与しない。透徹した眼差しに、敬意を覚えた次第である。

大卒だって無職になる

大卒だって無職になる "はたらく"につまずく若者たち


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