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エネルギーで一身独立

自由・自立・自律と、エネルギー問題を中心にサステナビリティに関する有益な情報を提供するための記事を書いています。

【ディスカッション・ペーパー】今後の天然ガス利用の在り方


私が日本は天然ガスの利用を拡大すべきと意見を常々主張しているのは、過去記事にもあるとおりだ。

flatenergy.hatenablog.com

エネルギー源のチャンピオンは、近代以降、石炭、そして石油 が担ってきた。次のエネルギー源のチャンピオンとして利用が広がっていくのは、天然ガスと多くの専門家の間で目されている。

この記事では、私が着目する日本の天然ガス利用の在り方を変え得る二つの技術の可能性と課題について検討する。一つ目の技術はガス・コジェネレーション、もう一つは天然ガス自動車である。

天然ガスは供給増と価格低下が見込まれ、日本にとってより現在よりも利用しやすいエネルギー資源に変わっていく条件が揃ってきている。このような動向を踏まえ、日本でどのような利用の仕方を広げていけるだろうか。その選択肢に関して本稿では以下の二つの技術について検討する。

一つ目の技術はガス・コジェネレーションだ。
コジェネレーション(cogeneration)とは、排熱を有効利用してエネルギー効率を高めたシステムのことだ。従来の火力発電を始めとする炭化水素エネルギーを用いた施設は、熱量の多くを排熱として無駄に捨てていた。最新鋭の石炭火力発電所とされている電源開発(J-Power)の磯子火力発電所の熱効率は45%であり、55%は利用できずに環境に排出している。加えて原子力発電所の大規模な再稼働が政治的に難しい状況を踏まえ、コストが安くエネルギー効率も高い炭化水素エネルギーを用いた技術が求められている。「我が国のエネルギーバランス・フロー 」においても、日本で投入されているエネルギーの2/3程度しか利用できていない。

「我が国のエネルギーバランス・フロー 」
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エネルギー効率の改善は3.11があってもなくても、急務だったのである。
そこで注目されているのがガス・コンバインドサイクル発電だ。ガス・コジェネレーション技術の一つであり、従来使われていなかった排熱によって生じた蒸気でタービンを回している。つまりガス・コンバインドサイクルを用いた火力発電所は、一つの施設でガスと蒸気で二度発電できる施設である。これによって、「川崎天然ガス発電株式会社」が所有する川崎天然ガス発電所は、最大57.6%の熱効率を実現している。

flatenergy.hatenablog.com

しかし、大規模なガス・コンバインドサイクル発電であっても送電過程でのロスは免れない。よりエネルギー効率を重視するなら、業務・工場用の中規模のガス・コジェネレーション設備や家庭・商店用の小規模の燃料電池コジェネレーション設備の導入を推進する必要がある。このような分散型コジェネレーション設備が普及すれば、送電ロスを事前に防ぐことができる。また、中小規模の設備の場合、排熱は温水・冷水や冷暖房に利用する方がより効率的である。分散型コジェネレーション設備を普及させることによって、日本の最終エネルギー消費の半分を上回る(残りの約1/4が電力、もう一つの1/4が運輸)固定の熱需要を賄うことにも繋がる。
ガス・コージェネレーション設備普及の課題は、機器やエネルギー源のガス価格といった問題も当然あるが、最大のそれは熱需要をできる限り正確に把握することだ。十分な温水・冷水や冷暖房需要がなければ、排熱を有効に利用することはできない。排熱を増やさないために設備の出力を下げれば、結局送電線からの電力会社の大規模電源に電力供給を頼らざるをえなくなる。中小規模のガス・コージェネレーション設備を導入する際には、有効な熱利用を行えるシステムを設計してくれ、トラブルが起きた際のフォローも欠かさない事業者を見つけることが重要となる。


二つ目の技術は天然ガス自動車だ。
1997年のプリウスの発売以降、従来のガソリン・エンジン車、ディーゼル・エンジン車に代わる次世代自動車の開発・普及が加速してきた。しかし天然ガス自動車は他の次世代自動車の候補と比べ、あまり着目されていない。政府の「次世代自動車戦略2010(http://www.meti.go.jp/press/20100412002/20100412002-3.pdf)」においても、言及はされているが、「インフラ整備戦略」の項目ではEV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド車)のみ言及されており天然ガス自動車の影は薄い。「天然ガス自動車の普及戦略研究会」の資料 によれば、2011年の天然ガス自動車の普及率で、日本はアメリカとともに約0.05%であったという。
しかし、アメリカでは従来事業者向けが中心だった天然ガス自動車が一般に広まる機運が高まっている。ホンダが発売している「シビック・ナチュラルガス」はアメリカで唯一入手できる大量生産している天然ガス車で、同様の装備のガソリン車と比べ価格は高いもののランニング・コストは安く、10年で元が取れるという 。このまま価格の下落傾向が続けば、ハイブリッド車やEVなどと比べてもコスト面での優位を得られるのは間違いない。
他にも天然ガス車を普及させる利点はある。ガソリン車やディーゼル車と比べた場合、上記したように二酸化炭素の単位当たりの排出量が少ない。また、主要な輸入ルートがロシア極東・マレーシア・インドネシア・オーストラリア、また日本に輸入する際に原油よりもホルムズ海峡のようなチョークポイントに依存していない。加えて将来的にはアラスカ・カナダ西岸からの輸入も見込まれる。
レアアースの問題もない。ハイブリッド車やEV, PHVの生産に欠かせないネオジムやジスプロチウムは世界の産出量の97%以上を中国が占めており、供給途絶リスクに将来に渡って晒される恐れがある。天然ガスは供給国が十分に多元化しており、日本への輸入の中で一番シェアの多いマレーシアでも20%程度だ。
課題となっているのは190マイル(304キロ)とガソリン車より短い航続距離に加え、天然ガススタンドの普及だ。特に日本では、全国土をカバーする幹線パイプラインがアメリカと異なり存在しない。普及には事業者のみではなく政府の努力も必要になる。


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