一身独立

多動性を発揮し、「21世紀の百姓」を目指す27歳元エリートのブログ。

【書評】『脱原発を決めたドイツの挑戦』


ドイツ政府は3つの明確の将来目標を表明している。それらは以下の3つだ。


1)二酸化炭素の排出量を、2050年までに80%減らす。
2)電力に占める再生可能エネルギーの比率を、2050年までに80%にする。
3)原子力発電所を2022年にすべて閉鎖する。


いずれも極めて野心的な目標であり、特に3)の目標は「ドイツにできて、なぜ日本でできないのか」と反原発派が嘆く点だ。

ドイツの電力自由化、およびこれら3つの目標に向かう取り組みからは、日本の気候変動政策・エネルギー政策を議論する上でも重要な教訓が引き出せる。


1)を達成するための課題は、石炭・褐炭火力発電の減少だ。石炭・褐炭は燃焼時に温室効果ガスとなる二酸化炭素を多く排出する。気候変動を懸念する市民から大いに嫌われている由縁だ。
一方ドイツでは国内に産地があり価格が安いという事情で、日本では原発が止まり代替エネルギー源として求められたという事情で、石炭火力発電所の勢力が回復しつつある。
このような逆風の中で安く安定したエネルギー供給と気候変動の解決、この二つを両立する政策を追求するのはドイツでも日本でも難しい情勢だ。日本政府は2030年度までに日本が排出する温室効果ガスを2013年度比で26%削減する目標案を発表した。今後は二酸化炭素排出に対する税金(炭素税)や排出権取引を実行に移せるかどうか、が実効ある気候変動対策のための試金石となる。

(2015.7.13追記:炭素税は「地球温暖化対策税」という名前で、すでに2012年から導入されていた。不見識をお詫びしたい。)

2)を達成するために、FIT(再生可能エネルギーを推進するために、再生可能エネルギーから作られた電力を高く買い取る制度)の制度設計をいかにすれば良いか、という課題に既にドイツ人は試行錯誤してきたし、今もしている。
ドイツの電源に占める再生可能エネルギー比率(大型水力含む)は26%。日本は7%だ。再生可能エネルギー拡大に成功しているドイツから、日本がFIT制度設計の上で学ぶべき点は多い。
一例として挙げられているのは、託送料金の管理だ。
託送料金とは、送電線を保有していない発電会社が送電線を使用する際に送電線の持ち主の会社(日本で言えば東京電力などの「一般電気事業者」)に支払う料金のことだ。高く設定すれば、新規の電力会社の参入障壁となりうる。
著者によれば、適正な託送料金を実現するためには、託送料金の監督機関が必要となるそうだ。このあたりは日本の電力自由化論議に大きな示唆を与えてくれる。


3)はメルケル政権の偉業として日本では賞賛する向きがある。しかし、メルケルは元々原子力擁護派だった。前政権のシュレーダー政権は、原子力を2034年まで認める決定をしていた。メルケルはこれを修正し、原子炉の稼働年数を「平均十二年間延長した」のである。
メルケルは2009年に「ドイツの未来を保証するためには、原子力は必要だ」と発言している。

なぜメルケルは転向したのか?

これは著者のもう一つの著書のテーマであり、これ一冊で本が書けるテーマである。
一つ指摘できるのは、酸性雨チェルノブイリ事故などの環境問題をイシューに掲げてきた「緑の党」が、第三党として議会の議席を占めているという事実である。最後でも述べるが、このこと一つとっても、ドイツ人がいかに環境問題および、その内の一つであるエネルギィ問題を重視しているかが理解できよう。
2011年4月に行われたアンケートによると「次に電力会社を変更するときには、再生可能エネルギーだけから作られた電力を買う」と答えた市民が、なんと86%に登った。
2016年度から日本でも、電力自由化が始まり既に大手以外の電力会社が増えているという。日本の消費者はどのような電力会社を望むのか? 消費者の指向を踏まえて、どんな電力会社が業界に現れるのか? 来年度の業界の動向から目が離せない想いだ。

これら3つの壮大な野望を実現するため、ドイツ国民は大きなコストをかけながら「エネルギー改革(EnergieWende)」に邁進している。

著者によれば、先進国初の壮大な実験にドイツ人が傾く理由には、ドイツ人の環境問題を重視する国民性があるという。
目先の経済的な理由よりも、エコロジーという政治的イデオロギーを重視するのがドイツ人なのだそうだ。


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