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エネルギーで一身独立

自由・自立・自律と、エネルギー問題を中心にサステナビリティに関する有益な情報を提供するための記事を書いています。

【書評】『マグマ』

書評 地熱発電 日本の包括的なエネルギー政策 電力システム


本書は3.11以前の2006年に地熱発電を取り上げた経済小説であり限りなく現実感がある。
著者は、外国資本ファンドによる日本企業への敵対的買収を描いた「ハゲタカ」や日本の支援による中国での原子力発電所開発を描いた「ベイジン」などの著書がある。ビジネス・パーソンを中心にファンが多い。
なお本稿では地熱発電の利点における熱利用は取り扱わず、発電についてのみ取り扱うことを断っておく。


基本的な物語はアメリカ系金融機関に務める野上妙子が突然利益の上がっていない地熱発電所の再生を任されるところから始まる。彼女が困難を抱えながらも周囲の協力を得ながら問題を解決していく娯楽小説だ。

一方本書では地熱発電普及の課題である「需要先確保」「温泉組合との関係」を取り扱い、限りなくノンフィクションに近い要素もある。そしてそれらの課題の解決策も示されている点が本書をより魅力的にしている。
併せて重要な課題である「環境アセスメントの迅速さ」にも触れられればより良かったのだろうが、そこは物語の都合上許さなかったのだろう。

加えて欠点を挙げるなら、冒頭に物語の始点となる日本への原子力発電所の閉鎖勧告が国際会議でなされる場面の回収の仕方だ。
その理由を「ちょっとした気まぐれ(文庫版pp384)」で済ませるのはご都合主義だと感じた。

それでも本書の魅力は色褪せない。

特に印象に残ったのは、地熱発電のみならず現実のPPS(需要先が東京電力などの地域電力会社ではなく自前で需要先を確保している発電所運営者)の共通課題である「需要先を動かす」を場面(文庫版第七章第六節参照)だ。
コモディティ(どこでも一物一価が成立し製品差別化できない生産物)である電気の供給源にこだわる必要性を日本の大企業のトップに訴える場面は、鳥肌の立つ思いで読み進めたのを覚えている。


この本はPPSの実践の仕方の一つを示すことに成功している。
電気という生産物は、火力で作ろうと原子力で作ろうと自然エネルギーで作ろうと同じものである。

この小説は「あなたはどのエネルギー源からつくられた電気に金を使いたいですか」と問いかけているのだ。



【参考】

朝日新聞・渡辺康人『大雪山国立公園内の地熱発電計画』2013.4.1

http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20130401010500001.html


マグマ (角川文庫)

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